叙述ミステリーと倒叙ミステリーって何?違うもの?

どうも。管理人のコウキです。

ちょっと今回はミステリーのウンチクについて。

推理ものにハマっている人にとっては当たり前に知っていることですが、この前知人に叙述ミステリーと倒叙ミステリーって違うものなの?

なんて聞かれたので、それをネタにしていきたいと思います。

ちなみに叙述は「じょじゅつ」倒叙は「とうじょ」です。

まず、叙述や倒叙なんて知らなくてもミステリーを楽しむに当たって何の支障もありません。

よって見方を変えれば役に立たない知識ですがだから何?とか言わんでくださいね。

スポンサードリンク

叙述トリック

ミステリー小説において主に読者の先入観、思い込みなどを利用したトリック。

実にいろいろなパターンがあるので一言での説明は難しいですが、大体、読者をミスリードして思い込ませその思い込みとは異なる結末を見せるというパターンが多いです。

ミスリードとは作者が意図的に読者に誤った解釈をするように表現すること、って感じかな。

ミスディレクションって言ったほうが知ってますかね。マジシャンや漫画「黒子のバスケ」の黒子テツヤが使うヤツです。
それを小説でやるってことですね。

なかなかおもしろいショートショートがネットにあったので例として挙げてみます。

「この写真の男に何か見覚えはありませんか」

そう言われて差し出された写真を受け取る手がかすかに震える。

あや子はその眼を見た瞬間に6年前の忌々しい出来事を思い出していた。

かつては魅力的だとも勘違いしたずる賢い狐のような切れ長の眼、高校時代の同級生、酒井慎一に間違いない。

今よりも40キロは太っていたあや子が、卒業直前にひっそりと酒井の机の中に忍ばせたラブレターをクラスじゅうにさらけ出し笑いものにした男だ。

「どうかいたしましたか」

「あっ、いえ…この人、何したんですか」

「区内で起きている連続コンビニ強盗の犯人です」

「逃走に使ったと思われる原付が、まあ盗難車ですけどね、それがこの辺りで見つかったものですから、目撃情報等あたっている最中です」

何度も同じ説明をしているのだろう、刑事はやや早口で面倒くさそうに説明した。

ケチな男。

あや子は写真をまじまじとみつめながら考えた。

こんなにはっきりと顔が映っているのだから放っておいてもすぐに捕まるだろう。

だがこれは酒井に対してささやかな復讐を果たす絶好の機会、逃す手はない。

「見たことある、気がします」

「本当ですか。いつどこでですか」

「あの、このあたりでリヤカーを引いて空き缶とかを集めている人たちいますよね。そういう人たちと一緒にいて、若い人もいるんだなって思ったので覚えているんです」

「そのホームレス連中と一緒にいた若い男がこの写真の男なのですね」

「すごく似ているって気がします」

「直接そういう人たちに聞いてまわってみてはどうでしょうか」

「わかりました。ご協力に感謝します」

そう言って足早に去っていく刑事の背を横目で見送りながら、あや子は思わず呟いた。

「捜査は足で稼げってね。せいぜいがんばって、酒井くん

最後の衝撃(大げさ)の1行、いかがでした?この1行こそが叙述トリックの醍醐味なんです。

最後にあや子が呟いた言葉の意味わかりましたでしょうか。

そうです。

酒井くんは写真の男ではなく刑事。

「そういう人たち」に聞き込みをさせて無駄な労力を酒井くんにさせるあや子のささやかな復讐。

この場合のミスディレクションは「その眼を見た瞬間に・・・」あたり。

話の流れから、大抵の人が「写真の人物の眼」だと思うわけです。そして、写真の人物が「酒井くん」と思い込ませる。

でも実は、あや子が見ていたのは「刑事の眼」だったのですね。これが作者の仕掛けたミスリードというわけです。

スポンサードリンク

倒叙ミステリー

通常、ミステリーと呼ばれるものは何者かが事件を起こし、その何者かを特定するべく探偵や刑事などが捜査し、推理し犯行を暴き、意外な真犯人が判明。

この意外な真犯人という部分が読者を引き込む大きな要素。

つまり、作中で犯人が判明するまで読者にも真犯人はわかっていません。

倒叙ものとよばれるミステリーも流れは同じで事件が起き主人公が解決していくのですが、事件が起きた時点で、犯人が読者に判明しているのが大きく異なる点です。

犯人どころか、犯行の一部始終を描写しているのがほとんど。

なので、読者は犯人側の手の内はすべてわかった上でそれを解き明かそうとする主人公と犯人との攻防を楽しむ、という趣向が主となります。

有名なところでは、小説ではないですが

「刑事コロンボ」

「古畑任三郎シリーズ」

などがありますね。

つまりは、叙述と倒叙、ミステリーにあんま興味ない人は似たようなものかもしれませんが、ミステリーファンにとっては全く異なります。別物です。

スポンサードリンク

おすすめ叙述ミステリー

では、それぞれのおすすめをちょっとだけ。

ミステリー好きなら絶対読んでるやつばっかですので。

叙述ミステリーなら、

「十角館の殺人」綾辻行人

結構有名な叙述物の傑作で、これまた結構有名な綾辻行人のデビュー作です。

この後、水車館の殺人、迷路館の殺人と続く「館」シリーズの第1作目でもあります。

今だ、綾辻行人はデビュー作を超える作品を発表できていない、と言われるほどのインパクトのある内容。

犯人判明シーンは、まさに衝撃の一行でした。

次は、賛否両論の

「イニシエーション・ラブ」乾くるみ

これは好き嫌いが見事に分かれる作品ですが、あえて紹介します。

もちろん、個人的に良く出来た叙述ミステリーだと思うから紹介するのですが・・

まず、ミステリーと言いながら事件ありません。普通に恋愛小説です。

ストーリー上、ミステリー色は皆無です。ですが、作者が仕掛けた叙述トリックが秀逸。

物語後半、ある違和感を抱きながらも多くの人は完全に騙されるでしょう。

そしてラスト数行。

ある人物のセリフで物語全体がひっくり返ります。見事でした。

そういえば「イニシエーション・ラブ」は映画化されましたね。

管理人は映画見てないので推測でしかないのですが、おそらく原作とは違う内容ではないかと思います。

というのも、

普通に考えて映像化は不可能な内容ですから。

スポンサードリンク

おすすめ倒叙ミステリー

まずは映画化された

「容疑者Xの献身」東野圭吾の傑作です。

いわゆる半倒叙で、犯人は前半から判明し、犯行の描写もあるのですが完全なる犯行の全てが解明されるのは後半。

主人公、ガリレオこと湯川学が想像を絶する事件の全貌を解き明かします。

次にテレビドラマ化もされた

「福家警部補シリーズ」大倉崇裕

主人公が小柄でメガネの地味な女性という一般的な刑事のイメージとはかけ離れた設定が人気のシリーズ。

ドラマでは檀れいさんが演じてましたね。キャラは変わってますが内容は本格的な倒叙ミステリーです。

叙述ミステリー、倒叙ミステリーそれぞれ名作が数多くありますので読んでみてはいかがでしょうか。

では、また別の記事でお会いしましょう(^o^)/

スポンサードリンク