映画化もされた叙述ミステリーの傑作です。と、私は思っているのですが、この作品ほど賛否両論が激しい小説もないと言うほど、好き嫌いの分かれる作品です。
イニシエーション・ラブとは
この作品に関しては、これを言うだけでもネタバレになってしまうのですが・・・まぁほぼ無しということで。一応、叙述ミステリーです。
ミステリと言えばミステリなのですが、内容は99.9%恋愛小説。事件など起きないどころか気配すら皆無。ミステリ色はゼロ。終始ラブストーリーが展開します。
「最後から二行目で、本書は全く違った物語に変貌する」と本のカバーに記載がありますが、これが叙述トリックの部分。いわゆる大どんでん返しですね。
本当は、ただの恋愛小説という認識で読むのが一番だと思うのですが、カバーに思いっきり書いてあるし、最後に何かあるな、という意識で読むのもまたいいかなと思って述べました。
タロットシリーズというシリーズの中の一作で、6番目のタロット「恋人」がモチーフ。「天童太郎」という人が全シリーズに出ているらしいですが、それぞれ話のつながりは無いとのこと。
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絶賛と酷評
とにかくいろいろと評価が分かれる作品で、特に酷評している方はすごい。顕著なのがアマゾンのカスタマーレビュー。もう、星1つの人はボロクソ言ってます。
言っておきますが、万が一、これから読もうと思っている方はアマゾンのレビューは見ないように。確信に触れるネタバレ満載なので。
でもこの作品、軽く100万部を超えるミリオンなんです。特にくりぃむしちゅーの有田哲平氏がTVバラエティーで「最高傑作のミステリー」とコメントしてから部数が伸びたとか。
筆者もこんな記事を書くくらいなので、絶賛派。これだけ売れていて、その半数近くが酷評というのは個人的にちょっと理解できません。
なぜ、こんなにも意見が分かれるのかを、次の感想まとめで自分なりに分析してみました。(分析というほどのものでもありませんが)
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感想まとめ
実は私、恋愛小説というものを読んだことがありません。このイニシエーション・ラブが恋愛小説というのであれば、この作品だけです。
酷評している方の多くは、稚拙な恋愛もの、つまらない退屈な恋愛小説、などという意見を挙げています。つまり、他の作品と比較して、ということでしょう。
初めてこのような内容を読んだ私は、十分楽しめました。恋愛小説として。他を知らないので新鮮でしたし、ピュアな恋愛という忘れていた感情がよみがえり、最後まで一気読みしたくらいです。
なので恐らく、恋愛小説初心者ならまだしも、この類のジャンルを多く読破してきたユーザーにとっては陳腐なラブストーリーなのかもしれませんね。
よって、恋愛小説は何冊か読んだことがある、かつミステリはさほど興味がない、という人は向いてないかと思います。恋愛小説としては一級品とは言い難いということですかね。
もう一度言いますが、私は恋愛ジャンルは素人なので評価はわかりません。あくまでレビュー全体を見渡すと一級品じゃないのかな、という印象ということです。
逆に、叙述ミステリは多く読破してきました。非常によくできたトリックです。恋愛ストーリーとの融合っぷりもすばらしいと思います。
ラスト数行の衝撃度は、ジワジワ系。読んだ瞬間くる「おまえか!」みたいな瞬発力のある感じではなく「え?なにこれ?どういうこと?」系。
もう、終盤は読んでいて「ん?なんか?あれ?」みたいな違和感を感じます。そしてラスト2行。それまでの物語がすべてひっくり返るさまはお見事。
ミステリとして評価した場合、ストーリー構成を駆使した絶妙な叙述トリックは、個人的に何のためらいもなく傑作と評したいと思います。