一応、説明しておきますが「推理小説」であり「音楽小説」ではありません。著者は中山七里。
ドビュッシーはフランスの作曲家で、ベルガマスク組曲の中の「月の光」なんか有名・・・まあ、とりあえずミステリー小説です。
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本当にミステリー?
当ブログでも紹介している「イニシエーションラブ」もそうですが、とにかくミステリー色が無し。
物語序盤で大きな出来事はあるのですがミステリー感はゼロだし、中盤まで事件すら起きません。
中盤になって、やっとミステリーっぽいことが起きますが、それでもオマケ程度。
言ってしまいますが、8割、いや物語の9割がピアニストを目指す少女の青春スポ根ならぬピアノ根のサクセスストーリーです。
何と言ってもこの「さよならドビュッシー」は、このミステリーがすごい!俗にいう「このミス」の大賞作品です。
当然、本格ミステリーを期待したのですが中盤以降になっても一向にミステリー色が強まる気配がありません。何度も読むのをやめようと思いました。
私は学生時代吹奏楽の経験があり音楽も好きなのでどうにか耐えられましたが、それにしてもピアノのことばっかり。
終盤に差し掛かってもそれは変わらず、なぜこれが「このミス」の大賞?という思いが募るばかりでした。
挙句の果てにはミステリーということを忘れ、主人公の少女のピアノコンクールにドキドキする始末。
しかし今思えば、私にとってそのこと自体、つまりミステリーではなく青春ものっぽい内容自体がミスリードとなった気がします。
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最終盤、やられました
ボクシングに例えてしまいますが、序盤は相手からパンチすら出てこず、中盤に軽いジャブ、終盤にゆる~いストレートを余裕でよけて、最終盤すっかり油断して無防備なところに必殺ブローをカウンターで食らった感じ。
いや~ビックリしました。
読後、冷静に考えればトリックとしては、ありふれたまではいきませんが、そう突出しているわけでもないです。
しかし、演出がすごい。
これ本当にミステリー?という「油断」故にすっかり騙されましたし、そのインパクトも絶大でした。最後の最後で「このミス」大賞に納得です。
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まとめ
事前の情報は無く、このミス大賞というだけで読んだので良かったです。ラストに大仕掛けがあることすら知りませんでした。それが幸いしたかも。
この記事を読んだ方は最終盤に何かあることは分かってしまいましたが、それでも十分に楽しめると思います。
あと余談ですが、小説なので音楽の部分というか楽曲の表現は当然ながら文章のみです。ですが、それが素晴らしかったです。
音楽好きなら曲を聴きたくなると思います。ありふれた言い方ですが行間から音が聞こえてくるよう。私も作中に出てくる曲はYOUTUBEなどで聴いてしましました。
私自身音楽が好きということと、楽曲の表現が素晴らしく音楽小説としても秀逸というのがなければ、途中で放り投げていたと思います。
最後に・・・騙されたければトリックの「種類」は知らないほうがいいですね。
物理トリック、アリバイトリック、心理トリック、密室トリック、叙述トリック、時刻表トリックなどいろいろありますが、さよならドビュッシーはどのトリックに当てはまるかを知らずに読むことをおすすめします。